空き家を増加させる登記制度

年々増加する空き家の数は、2014年は7軒に1軒の割合で、これが2033年には3軒に1軒にまで増えるであろうという衝撃的な数字が、野村総合研究所から発表されています。空き家を増やす原因の一つとして、現在の登記制度が挙げられます。

不動産の登記は大きく分けると、不動産のハード部分(所在・面積など)を表示する表題部と、ソフト部分(所有者や担保など)を表示する権利部に分かれており、表題部の登記をすることは義務付けられていますが、権利部の登記は義務ではありません。したがって、売買などの場合で権利部の登記をしないことはまず考えられませんが、相続が起きたときに名義を変更することが義務とはなっていないため、放置されるケースが多いのです。登記するためにも費用がかかることや、相続人間での話し合いがつかないなど、当事者の理由で放置されることもありますが、国の制度が足を引っ張るケースが多いのも事実です。例えば登記が義務付けられていないことはもちろんですが、相続人の中に認知症の方がいれば、話し合いをするために家庭裁判所で、成年後見人を選任しなければならなかったり、行方不明者がいれば不在者財産管理人を選任しなければならなかったり、相続人全員が相続放棄をした場合に相続財産管理人を選任しなければならなかったりと、それぞれ法律の専門家が選任されなければ、前に進めないということに陥ります。それも一律ではない仕事内容で簡易なケースについても、一般消費者の金銭感覚からしてみても、法外ともいえる報酬を裁判所の認定のうえ受け取られ、なおかつこれでもかというほど待たされます。こういう公共性の高い職務については、もっと安価に迅速に進めるようにしなければ登記制度が破たんすることにならないでしょうか?

社会問題化してくる空き家について、「相続登記はしてますか?」という、おざなりの問いかけをポスターで貼り出す費用と時間があるのなら、これらの硬直した制度を見直さないことにはますます、所有者不明の不動産が増えるばかりです。当事務所でも現在70名の相続人がいる案件を手掛けておりますが、このケースは昔相談した司法書士が、売却しないのであれば相続で名義を変えることもないとアドバイスをしたために、現在の相続人の方が多大な苦労と費用を負担することになってしまっており、もう一代放置されていたらとぞっとします。皆さんにも相続登記は義務ではないからと放置せず一日でも早めの手続きをお勧めいたします。

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