あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2017年最初のコラムは、「預貯金が遺産分割の対象財産となった」という内容で、お伝えしたいと思います。
こう書くと、「えっ?今まで預貯金は遺産分割する財産じゃなかったの?」と思われるかも知れません。
実は、預貯金については2004年の最高裁の判例等で、「相続が開始すると同時に当然に分割され、各相続人がその相続分に応じて権利を承継する。」となっていたんです。あくまで判例上はですが。(もちろん相続人間で遺産分割することを妨げるものではありませんでした。)
ということは、理論上、相続人の方はそれぞれ自分の相続分に相当する額であれば、銀行等で一人で引き出す手続をすることができたということだったのですが、実際上、そういう手続に応じていた金融機関は非常にまれでした。これは、金融機関側が他の相続人から、「何で勝手に引き出すことを許したのか?」と言われて訴えられたりするリスクを回避するためでありました。要は、判例と、金融実務では異なる取り扱いがされていたのです。
このたび、2016年12月19日に最高裁では、これまでの判例を変更して、預貯金も遺産分割の対象となるという判断をしました。このことによって、ごく少数派であった、各別の相続人からの引き出し手続きに応じていた金融機関も、取扱いを変更することは必至となりました。
金融機関は口座名義人の死亡を把握すると同時に、その口座を凍結してしまうのが通常です。その口座を解約したり、名義変更を行う場合は遺言や、遺産分割協議書、戸籍謄本等をそろえなければなりません。亡くなられた方の資産で生活している相続人がいるような場合、亡くなられた方がなんの対策も講じていないと、生活ができなくなったりすることも想定されるので、くれぐれも遺言や民事信託などの準備をして、相続人がスムーズに預貯金を引き出すことができるよう手配をしてあげて頂きたいと思います。