法務省では、2017年5月の開始を目指して、「法定相続情報証明制度」というモノを新設することを発表しました。
これは、相続人全員の氏名や本籍などの情報をまとめた1通の証明書を発行するというもので、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は、亡くなった人によっては大量になることもありますが、財産ごとに相続の手続をする際に、その書類全部を持参しなくても、最初に書類一式を法務局に提出すれば、その後は法務局の発行する1通の証明書の提出で済むようになるということだそうです。
これが相続手続きの簡素化になるのか?というと、相続手続きを受け付ける側(銀行や証券会社、生命保険会社など)にとっては楽になるかもしれません。というのは、全ての戸籍を確認して、相続人が誰になるのかの判断をする作業を、法務局任せにすることができ、その責任を回避することができることになるだろうからです。
ただ、相続人の方々の負担が減るかというと、ほぼ変わらないと思います。
我々も、相続人の方から遺産承継業務として、財産の名義変更や、解約手続きを行うことが多いのですが、その経験から言うと、法務局に証明書を発行してもらうためには、全ての戸籍を必ず集めなければならないでしょうし、それぞれ銀行や、生命保険会社に対する手続で、その戸籍全てが必要になっていたのは事実ですが、すべて原本は返してくれていましたので、この証明書ができたことで、相続人の方からすると持参する書類が軽くなる程度のメリットしかないように思います。
我々実務家からすると、問題はそこではないのでは?と思ってしまいますが、これからパブリックコメントを集めて詳細を決めていくのだそうです。
相続手続きの問題としては、裁判所で手続きが必要となる不在者財産管理人や、相続財産管理人の予納金の高さが、社会問題を引き起こしている原因になっている事実に気づいてほしいと思います。