相続の開始原因


被相続人の日記と時計

多くの方が想像するように、相続は、人の死亡によって開始します。

旧民法(昭和22年12月31日以前)時代では、戸主の死亡・隠居・入夫婚姻といった原因による、「家督相続」という制度がありました。これは戸主となる身分関係を相続するものでしたので、その相続人は1人に限られるものでした。

現在この制度は廃止され、相続は人が死亡したときにのみ開始します。

新民法が施行されたのは、昭和23年1月1日からですが、その相続に関する内容についても、昭和37年、昭和55年に一部が改正されております。

 

注意したいのは、ずっと昔に亡くなっている人で、相続手続きが未了の場合には、その人の亡くなった時点での民法が適用されるので、年代によっては相続人となる方が、現在の民法による相続人の範囲とは異なることもあるということです。

 

現行の民法での「死亡」 には、通常の死亡のほか、法律上死亡とみなされる失踪宣告認定死亡というものがあります。

 

当然のことですが、被相続人が死亡した時点において生存している相続人のみが相続できるということで、これを 同時存在の原則 といいます。

大きな事故・災害などで死亡した二人の死亡の先後を確定するのが困難な場合があります。このような場合、同時死亡の推定といって、二人は同時に死亡したものと推定されます。同時死亡が推定されると、二人の間で互いに相続は発生しませんが、代襲相続(相続人となるべき者が死亡している場合、その者の直系の子や孫が相続人となること)は生じます。

失踪宣告

失踪 悩む 家族

失踪宣告とは、ある人が一定期間生死不明となっている場合に、家庭裁判所の審判により、その人が死亡したものとみなして、財産関係や身分関係につき死亡の効果を発生させ、法律関係の確定を図る制度です。

失踪宣告には、①普通失踪と②特別失踪の二種類があります。

 

失踪の種類

  1. 普通失踪・・・消息を絶った時から7年間生死が不明である場合
  2. 特別失踪・・・戦争終結後、沈没後、その他の災難が去った時から1年間生死が不明である場合 

認定死亡

戸籍法上の制度として,「認定死亡」という制度があります。

認定死亡とは災害・事故その他の事変によって、死亡したのは確実であるが、遺体が発見できないという場合があります。このような場合に、官公庁による死亡の報告によって、戸籍上一応死亡として扱います。本籍地の市区町村では、 死亡報告に基づいて戸籍に死亡の旨記載します。これを認定死亡といいます。

認定死亡がなされれば,相続も開始することになります。

 

 

認定死亡と失踪宣告の違い

 

認定死亡も失踪宣告も、実際に死亡したかどうかを確実に証明することができないために、死亡した蓋然性があり、ある人を死亡したものとして取扱って、法律上の関係の確保を図ろうとする制度であるという点では共通しております。

ただ、認定死亡と失踪宣告には、以下のような違いがあります。

 

  認定死亡 失踪宣告
死亡の確実性の程度 死亡したことが確実といえる場合 生死が不明であるという場合にも利用することができます
認定機関 官公庁が死亡を認定して戸籍事務を取り扱う市町村長に報告する 家庭裁判所の審判で決定する
法的効果 死亡を「推定する」 死亡したものと「みなす」

 

具体的にどう違うかというと、「推定する」という場合には、反対の証拠を挙げれば推定を覆すことができるのに対し、「みなす」という場合には、反対の証拠を挙げただけでは覆すことができず、家庭裁判所で失踪宣告取消しの審判が確定しないといけないということです。


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